売却するときに関連する税金
不動産を売却する際に関連する税金にはつぎのようなものがあります。
所有期間の計算方法
まず、譲渡する不動産の所有期間を決める必要があります。
譲渡した年の1月1日における所有期間
5年超 長期
5年以下 短期
※譲渡の日とは
つぎのいずれかを選択できます。
1.その不動産を相手方に引き渡した日(原則)
2.譲渡契約の効力発生の日
※取得の日とは
不動産の取得方法 |
取得の日 |
他から取得した |
引き渡しを受けた日(売買契約の効力発生の日とすることもできる) |
自ら建設した |
建設が完了した日 |
請負により建設した産 |
引き渡しを受けた日 |
贈与、相続、遺贈により取得した |
以前の所得者の取得日を引き継ぐ |
固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例、
収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例を受けている場合 |
旧譲渡資産の取得日を引き継ぐ |
居住用財産の買換の特例、
特定の事業用資産の買換の特例を受けている場合 |
実際の取得の日 |
借地権者が底地を取得した場合、
底地を所有している者が借地権を取得した場合 |
借地権部分と底地部分とは別個のものとして判
定する |
取得費が分からないとき
譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
取得費は、
土地の場合、買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額です。
建物の場合は、購入代金などの
合計額から減価償却費相当額を差し引いた額です。
しかし、売った土地建物が先祖伝来のものであるとか、
買い入れた時期が古いなどのため取得費がわからない場合には、取得費の額を売った金額の5%相当額とする
ことができます。
また、実際の取得費が売った金額の5%相当額を下回る場合も同様です。
例えば、
土地建物を3,000万円で売った場合に取得費が不明のときは、売った金額の5%相当額である150万円を取得費とすることができます。
[平成20年5月1日現在法令等] (所法33、38、措法31の4、措通31の4−1)
譲渡所得の計算方法
計算は、下表の1の式によります。1の式に入れる内容は2〜4に説明してあります。
|
項目 |
内容 |
1 |
課税譲渡所得金額 |
=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額 |
2 |
譲渡収入金額 |
不動産の譲渡によりその年に収入すべきことが確定した金額 |
未収入金の計上 |
譲渡代金を譲渡した年中に未収があっても収入金額に計上 |
金銭以外による収入金額 |
例えば土地で受け取った場合は、時価が収入金額 |
3 |
取得費となるもの |
購入代金(建物の取得費は、購入代金又から減価償却費相当額を差し引いた金額) |
建築代金(建物の取得費は、建築代金から減価償却費相当額を差し引いた金額) |
仲介手数料など |
土地や建物を買うために支払ったもの |
設備費 |
改良費 |
登録免許税 |
不動産取得税、特別土地保有税、印紙税、登記費用も含む。
なお、業務の用に供される資産の場合には、これらの税金は取得費に含まれません。 |
立退料 |
借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立退きさせるために支払ったもの |
造成費用 |
土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払ったもの |
測量費 |
土地の測量 |
訴訟費用 |
所有権などを確保するために要したもの |
建物の購入代金や取壊しの費用 |
建物付の土地を購入して、その後1年以内に建物を取り壊したとき |
利子 |
土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分 |
違約金 |
既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出したもの |
4 |
譲渡費用となるもの |
仲介手数料など |
土地や建物を売るために支払ったもの |
印紙税 |
で売主が負担したもの |
立退料 |
貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払ったもの |
取壊し費用とその建物の損失額 |
土地などを売るためにその上の建物を取り壊したとき |
違約金
|
更に有利な条件で売るために支払った
これは、土地などを売る契約をした後、その土地などを他へ高い価額で売却するため最初の契約者に支払った違約金を指す |
名義書換料など |
借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払ったもの |
特別控除と軽減税率の基本事項
居住用財産の3,000万円特別控除 |
所有期間10年超の軽減税率 |
● |
所有年数に関係なくマイホームの譲渡所得のうち3,000万円まで非課税 |
● |
所有期間10年超のマイホームなら、課税譲渡所得のうち6,000万円まで税率14% |
● |
3,000万円特別控除と軽減税率の特例はセットで適用を受けることができる |
● |
3,000万円特別控除と住宅ローン控除とは併用できない |
短期譲渡所得
項目 |
内容 |
対象となる不動産の条件 |
譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下 |
課税短期譲渡所得金額の計算 |
課税短期譲渡所得金額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用) |
税額の計算 |
税額=課税短期譲渡所得金額×39% (所得税30%, 住民税9%) |
計算例(短期譲渡所得)
設定条件 |
対象不動産 |
事務所用建物を売却 |
購入時期 |
平成18年4月 |
売却時期 |
平成20年4月 |
購入価格 |
4365万円 |
(土地:2580万、建物:1785万) |
建物減価償却 |
178万 |
仲介手数料 |
140万円 |
印紙税 |
1万5千円 |
不動産取得税 |
148万8千円 |
登録免許税 |
16万円 |
売却価格 |
5000万円 |
売却費譲渡費用 |
150万円 |
計算方法及び結果 |
譲渡価格 |
5000万円 |
取得費 |
4493万3千円(=4365万-178万+140万+1万5千+148万8千+16万) |
譲渡費用 |
150万円 |
譲渡所得金額 |
5000万-(4493万3千+150万)=356万7千円 |
税額 |
356万7千円×39%=1,391,130円 |
1 譲渡価額とは、土地や建物の売却代金などをいいます。
2 取得費とは、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費などの額を加えた合計額をいいます。
なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。また、土地や建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。
3 譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、登記費用、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。
長期譲渡所得
所有期間が5年を超えると、短期譲渡所得に比べ低い税率で計算され税額が少なくなるメリットがあります。
項目 |
内容 |
対象となる不動産の条件 |
譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年超 |
課税短期譲渡所得金額の計算 |
課税長期譲渡所得金額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用) |
税額の計算 |
税額=課税長期譲渡所得金額×20% (所得税15%, 住民税5%) |
計算例(長期譲渡所得)
設定条件 |
対象不動産 |
事務所用建物を売却 |
購入時期 |
平成13年4月 |
売却時期 |
平成20年4月 |
購入価格 |
4365万円 |
(土地:2580万、建物:1785万) |
建物減価償却 |
620万円 |
仲介手数料 |
140万円 |
印紙税 |
1万5千円 |
不動産取得税 |
148万8千円 |
登録免許税 |
16万円 |
売却価格 |
5000万円 |
売却費譲渡費用 |
150万円 |
計算方法及び結果 |
譲渡価格 |
5000万円 |
取得費 |
4051万3千円(=4365万-620万+140万+1万5千+148万8千+16万) |
譲渡費用 |
150万円 |
譲渡所得金額 |
5000万-(4051万3千+150万)=798万7千円 |
税額 |
798万7千円×20%=1,597,400円 |
3000万円の特別控除
個人が居住用財産(本人が自宅として使用している家屋とその敷地))を売却した場合は、譲渡所得から3,000万円が控除できます。つまり、譲渡所得が3,000万円までは非課税(税金はゼロ)となります。
|
- 1.自分の家屋
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
- 2.特例を受けていない(1)
- 売った年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの買換えやマイホームの交換の特例若しくは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
- 3.特例を受けていない(2)
- 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
- 4.災害で滅失
- 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
- 5.家屋を取り壊した
- 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の二つの要件すべてに当てはまること。
- その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
- 6.売買関係
- 売手と買手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと。
特別な間柄には、このほか生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
|
|
特例は、次のような家屋には適用されません
- この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
- 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋
|
計算例(3000万円の特別控除)
設定条件 |
対象不動産 |
居住用建物とその敷地を売却 |
購入時期 |
平成18年4月 |
売却時期 |
平成20年4月 |
売却価格 |
8000万円 |
取得費 |
4000万円 |
譲渡費用 |
150万円 |
計算方法及び結果 |
譲渡所得金額 |
譲渡価額−(取得費+譲渡費用)-3000万円の特別控除 |
7000万円-(4000万円+150万円)-3000万円=-150万円→非課税(ゼロ) |
税額 |
ゼロ(譲渡所得金額)×税率=0 |
居住用財産の譲渡に係る軽減税率の特例
居住用財産を売って、つぎの適用要件に当てはまるときは、通常の税率より更に低い税率の特例を受けた長期譲渡所得の税額を受けることができます
項目 |
内容 |
|
この軽減税率の特例を受けるには、次の五つの要件すべてに当てはまることが必要です。
- 自分が住んでいる国内にある家屋、又は家屋と一緒にその敷地を売ること。
なお、住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
- 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。
- 売った年の前年及び前々年にこの軽減税率の特例を受けていないこと。
- 売った家屋や敷地について居住用財産の買換えや交換の特例など他の特例を受けていないこと。
- 居住用財産を売ったときの3,000万円の特別控除の特例とこの軽減税率の特例は、併用して受けることができます。
- 売り手と買い手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと。
- 特別な間柄には、このほか、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
|
|
課税長期譲渡所得金額
(a又はb) |
税額 |
a |
6,000万円以下 |
a×14%(所得税10%、住民税4%) |
b |
6,000万円超 |
(b−6,000万円)×20%(所得税15%、住民税5%) |
計算例(居住用財産の譲渡に係る軽減税率の特例)
設定条件 |
対象不動産 |
居住用建物とその敷地を売却 |
購入時期 |
平成1年4月 |
売却時期 |
平成20年4月 |
売却価格 |
11,500万円 |
取得費 |
800万円 |
譲渡費用 |
400万円 |
計算方法及び結果 |
譲渡所得金額 |
譲渡価額−(取得費+譲渡費用)-3000万円の特別控除 |
11500万円-(800万円+400万円)-3000万円=7300万円 |
所得税 |
譲渡所得金額6000万円以下 |
税額A=6000万円×10%=600万円 |
譲渡所得金額6000万円超 |
税額B=(7300-6000)万円×15%=195万円 |
税額=税額A+税額B=600万円+195万円=795万円 |
住民税 |
譲渡所得金額6000万円以下 |
税額A=6000万円×4%=240万円 |
譲渡所得金額6000万円超 |
税額B=(7300-6000)万円×5%=65万円 |
税額=税額A+税額B=240万円+65万円=305万円 |
税額 |
所得税+住民税=795万円+305万円=1100万円 |
居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
この特例の基本事項
● |
所有期間5年超のマイホームを売却して譲渡損失がでたとき、損失を他の所得と相殺できる |
● |
住宅ローンが残っていること |
● |
住宅ローン控除と併用可能 |
● |
買い換えは必要条件でないので、売却後賃貸住宅に入居した場合に適用できる |
● |
(1)と(2)のうち、いずれか少ないほうが対象です
(1) 売却した居住用財産の譲渡損失額
(2) 住宅ローン残高から売却代金を引いた残りの額 |
この特例により、
自宅(居住用財産)を売却した結果、譲渡損失(赤字)が出て、かつ売却した住宅の住宅ローンがある場合に、
下記の要件に該当すれば損失額を他の所得から差し引くことができ(損益通算)、
引き切れなかった分は3年間にわたって繰越して差し引く(繰越控除)ことができます。
|
|
売却する 居住用財産 |
次のすべてに該当する場合
- 平成10年1月1日から平成18年12月31日までに売却したもの
- 所有期間が売却した年の1月1日時点で5年を超える
- 敷地にかかる譲渡損失は、敷地面積500u以下の部分に係る損失が対象
- 売買契約日の前日において、売却資産に係る一定の住宅ローンの金額を有すること
|
その他 |
(1) |
繰越控除を受ける年分の合計所得が3,000万円以下(売却した年分の所得制限はない) |
(2) |
売却する相手先が、配偶者、直系血族、生計を一にする親族、同族会社、その他特殊な関係者でないこと |
(3) |
その居住用財産の売却に際して、他の課税の特例の適用を受けていないこと |
(4) |
3年以内に居住用財産の課税の特例の適用を受けていないこと |
|
計算例(居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
売却により譲渡損失が発生し、損益通算と3年間の繰越控除を行う場合について
(住宅ローン残高があるなど上記の条件は満たしているとします)
設定条件 |
対象不動産 |
自宅の建物及びその敷地(居住用財産) |
譲渡資産の購入代金と購入時期 |
6000万円 平成5年 |
譲渡資産の売却代金と売却時期 |
2100万円 平成20年 |
譲渡資産の減価償却費 |
400万円 |
譲渡費用 |
126万円 |
譲渡資産のローン残高 |
4000万円 |
平成20年の給与所得(源泉徴収額) |
800万円(源泉徴収額61万6000円) |
平成21年の給与所得(源泉徴収額) |
850万円(源泉徴収額69万6000円) |
平成22年の給与所得(源泉徴収額) |
900万円(源泉徴収額77万6000円) |
平成22年の所得控除額 |
250万円 |
計算方法及び結果 |
平成20年 |
譲渡所得金額 |
=譲渡額-(購入額-減価償却額)-譲渡費用 |
4000万円-(6000万円-400万円)-126万円=△1,726万円 |
売却代金控除後のローン残高 |
=譲渡資産のローン残高-譲渡資産の売却代金 |
4000万円-2100万円=1900万円 |
特例を受ける限度額 |
譲渡所得金額と売却代金控除後のローン残高のうち低い方 |
1726万<1900万円 →1726万円が限度額 |
|
損益通算 |
=給与所得-特例を受ける限度額 |
|
=800万円-1726万円=△926万円 |
|
源泉徴収額に対し |
所得ゼロ→税ゼロ→源泉徴収額61万6000円が還付 |
平成21年 |
繰越 |
=給与所得-繰越控除額 |
850万円-926万円=△76万円 |
|
源泉徴収額に対し |
所得ゼロ→税ゼロ→源泉徴収額69万6000円が還付 |
平成22年 |
繰越 |
900万円-76万円=824万円 |
所得税 |
=(所得額-所得控除)×税率-控除額 所得税の計算方法 |
(824万円-250万円)×20%-42万7500円=72万500円 |
源泉徴収額に対し |
源泉徴収額77万6000円>税額72万500円 →還付がある →77万6000円-72万500円=5万5500円が還付 |
居住用財産の買い換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
この特例の基本事項
● |
所有期間5年超のマイホームを売却して譲渡損失がでたとき、損失を他の所得と相殺できる |
● |
買い換えた住宅のローンが10年以上残っていること |
● |
住宅ローン控除と併用可能 |
自宅(居住用財産)を売却した結果、譲渡損失(赤字)が出た場合、下記の要件に該当すれば損失額を他の所得から差し引くことができ、引き切れなかった分は3年間にわたって繰越控除できるという特例です。
この特例は、新たに10年以上の住宅ローンを設定し新しく自宅をを買換える場合に限ります。この住宅ローンに対して住宅ローン控除の特例を適用することもできます。
ただし、譲渡損失の繰越控除で所得税がゼロになった年は住宅ローン控除が利用できません。
|
|
売却する 居住用財産 |
次のすべてに該当する場合
- 売却した年の1月1日時点での家屋とその敷地の所有期間が5年を超えるもの
- 敷地にかかる譲渡損失のうち、敷地面積500u以下の部分に係る損失が対象
- 平成10年1月1日から平成18年12月31日までに売却したもの
|
新しく買換えた 居住用財産 |
次のすべてに該当する場合
- 居住用部分の登記簿上の床面積が50u以上
- 売却した年の前年、その年、翌年末までに購入するもの
- 購入した年の翌年末までに居住すること
- 購入した年の年末において、購入に係る住宅ローンに返済期間が10年以上あること
|
その他 |
1) |
繰越控除を受ける年分の合計所得が3,000万円以下(売却した年分の所得制限はありません) |
(2) |
売却する相手先が、配偶者、直系血族、生計を一にする親族、同族会社、その他特殊な関係者でないこと |
(3) |
その居住用財産の売却に際して、他の課税の特例の適用を受けていないこと |
(4) |
3年以内に居住用財産の課税の特例の適用を受けていないこと(特例の適用は3年に1度) |
|
計算例(居住用財産の買い換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
買換による譲渡損失が発生し、損益通算と3年間の繰越控除を行う場合について
(住宅ローン返済期間等上記の条件は満たしているとします)
設定条件 |
対象不動産 |
自宅の建物及びその敷地(居住用財産) |
譲渡資産の購入代金と購入時期 |
6000万円 平成5年 |
譲渡資産の売却代金と売却時期 |
4000万円 平成20年 |
譲渡資産の減価償却費 |
400万円 |
譲渡費用 |
126万円 |
買換資産の購入代金と購入時期 |
6500万円 平成20年 |
平成20年の給与所得(源泉徴収額) |
800万円(源泉徴収額61万6000円) |
平成21年の給与所得(源泉徴収額) |
850万円(源泉徴収額69万6000円) |
平成22年の給与所得(源泉徴収額) |
900万円(源泉徴収額77万6000円) |
平成22年の所得控除額 |
250万円 |
計算方法及び結果 |
平成20年 |
譲渡所得金額 |
=譲渡額-(購入額-減価償却額)-譲渡費用 |
4000万円-(6000万円-400万円)-126万円=△1,726万円 |
損益通算 |
=給与所得-譲渡所得 |
800万円-1,726万円=△926万円 |
源泉徴収額額に対して |
所得ゼロ→税ゼロ→源泉徴収額61万6000円が還付 |
平成21年 |
繰越 |
=給与所得-繰越控除額 |
850万円-926万円=△76万円 |
|
源泉徴収額に対し |
所得ゼロ→税ゼロ→源泉徴収額69万6000円が還付 |
平成22年 |
繰越 |
900万円-76万円=824万円 |
所得税 |
=(所得額-所得控除)×税率-控除額 所得税の計算方法 |
(824万円-250万円)×20%-42万7500円=72万500円 |
源泉徴収額に対し |
源泉徴収額77万6000円>税額72万500円 →還付がある →77万6000円-72万500円=5万5500円が還付 |
特定の居住用財産の買換の特例
買換の特例の基本事項
● |
売った自宅より買換えた自宅の方が高ければ課税されない |
● |
課税は免除されるのではなく、課税が将来に繰り延べられるだけ |
● |
住宅ローン控除とは併用できない |
● |
買換の特例が得になるとは限らない |
特定の居住用財産の買換の特例とは
売却代金と購入代金とを比較して・・・
売却代金 ≦
購入代金 → 課税されない
売却代金 >
購入代金 → 差額に対して課税される
|
この特例は課税を免除されるものではなく、その年は課税されないけれども、買い換えたマイホームを将来売却するときに改めて課税されます。これを「課税の繰り延べ」といいます。
自宅を買換えする場合でも譲渡所得が3,000万円以下であれば、「3,000万円特別控除の特例」を利用したほうが、後々の課税の繰り延べなどがないため有利となる場合もあります。
どの特例を選択するかについては、適用要件や再度買換える時期などの事情も考えて、慎重に検討する必要があるといえるでしょう。
|
|
譲渡資産
(売却する方) |
次のすべてに該当する場合
- 売却した年の1月1日時点での家屋とその敷地の所有期間が10年を超える
- 売却する本人の居住期間が通算で10年以上
- 平成18年12月31日までに売却したもの
|
買換資産
(新しく購入した方) |
次のすべてに該当する場合
- 居住用部分の登記簿上の床面積が50u以上280u以下
- 敷地面積が500u以下(マンションの敷地は持分割合で配分した面積で判定)
- 中古マンションを購入した場合は築25年以内、または新耐震基準に適合すると証明されるもの
- 売却した年の前年、その年、翌年末までに購入するもの
- 売却前に購入した場合は売却の翌年末までに居住、売却後に購入した場合は購入の翌年末までに居住するもの
|
その他 |
(1) |
売却する相手が、配偶者、直系血族、生計を一にする親族、同族会社、その他特殊な関係者でないこと |
(2) |
その居住用財産の売却に際して、他の課税の特例の適用を受けていないこと
|
(3) |
その居住用財産を売却した年分に、住宅ローン控除の適用を受けていないこと |
(4) |
3年以内に居住用財産の課税の特例の適用を受けていないこと(特例の適用は3年に1度) |
|
計算例(特定の居住用財産の買換の特例)
設定条件 |
譲渡資産の売却代金 A |
5000万円 |
譲渡資産の取得費 B |
200万円 |
譲渡資産の譲渡費用 C |
300万円 |
買換資産の購入代金 D |
3000万円 |
計算方法及び結果 |
収入金額 イ |
=売却代金 A-購入代金 D |
=5000万円-3000万円=2000万円 |
取得費及び譲渡費用 ロ |
=(取得費 B+譲渡費用 C)×収入金額イ/A |
=(200万円+300万円)×2000万円/5000万円=200万円 |
課税長期譲渡所得金額 ハ |
=収入金額 イ-取得費及び譲渡費用 ロ |
=2000万円-200万円=1800万円 |
税額 |
=課税長期譲渡所得金額 ハ×税率 |
=1800万円×20%=360万円 |
課税の繰り延べとは
課税が将来に繰り延べられるとは、上記の例により説明すれば、買い換えたマイホームを例えば将来8000万円で売却した場合に、売却価額8000万円と購入価額7000万円との差額である1000万円の譲渡益(実際の譲渡益)に対して課税されるのではなく、実際の譲渡益1000万円に特例の適用を受けて課税が繰り延べられていた4000万円の譲渡益(課税繰延べ益)を加えた5000万円が、譲渡益として課税されるということです。
2000万円の特別控除
2000万円の特別控除の基本事項
● |
土地が特定土地区画整理事業等のため買い取られた場合で、要件をみたせば、最高2000万円の控除を受けることができる |
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買い取り主 |
次のいずれかに該当する場合
- 国
- 地方公共団体
- 独立行政法人都市再生機構
- 地方住宅供給公社
- 市街地再開発組合 等
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特定土地区画整理事業等の範囲 |
次のいずれかに該当する場合
- 土地区画整理事業
- 住宅街区整理事業
- 第一種市街地再開発事業
- 防災街区整備事業 等
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1500万円の特別控除
1500万円の特別控除の基本事項
● |
土地が特定住宅地造成事業等のため買い取られた場合で、要件をみたせば、最高1500万円の控除を受けることができる |
|
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買い取り主 |
次のいずれかに該当する場合
- 地方公共団体
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構
- 独立行政法人都市再生機構
- 成田国際空港株式会社
- 地方住宅供給公社
- 日本勤労者住宅協会 等
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特定住宅地造成事業等の範囲 |
次のすべてに該当する場合
- 住宅の建設又は宅地の造成を目的とする事業
- 土地収用法等に基づく収容等の対償のため
- 特定の民間宅地造成事業等
- マンションの建て替えの円滑化等に関する法律に規定するマンション建て替え事業
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特定事業用資産の買換の特例
特定事業用資産の買換の特例の基本事項
● |
下の表の譲渡資産を譲渡し、買い換え資産を取得した場合に、譲渡資産の代金に対して課税の繰り延べが認められます。 |
● |
特例の適用期間があります。 |
● |
譲渡資産の譲渡した時に対し買換資産の取得時期について制約があります。 |
項目 |
取得時期及び適用期間 |
買い換え資産の取得時期 |
買い換え資産を取得するのは、次のいずれかの年に該当する必要があります。
- 譲渡資産を譲渡した前年
- 譲渡資産を譲渡した年
- 譲渡資産を譲渡した翌年(但し税務署長の承認要)
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適用期間 |
この特例が適用できるのは、次の期間になります。
- 平成23年12月31日までに買い換え資産を取得し、取得の日から1年以内に事業に供する又は見込みであること
- 但し、下表のDについては平成20年12月31日まで
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譲渡資産 |
買換え資産 |
@ |
既成市街地等にある事務所、事業所等として使用されている建物(貸付の用に供されているものを含む)または、その敷地の用に供されている土地等で、平成3年3月1日以前に取 得されたもの(平成14年1月1日以降の譲渡では所有期間10年超のもの) |
既成市街地等以外の地域内(国内に限られる) |
A |
誘致地区(首都圏の近郊整備地帯内や都市開発区域内の計画工業団地等、およびこれに類する一定の区域) |
誘致地区内にある土地・建物等 |
B |
既成市街地等内にある土地・建物等 |
既成市街地等内にある土地等・建物等で土地 |
C |
市街化区域または既成市街地等の地域内にある土地等・建物等で、その土地等・建物等の敷地の用に供されている土地等の上に建築面積が150u以上で、且つ地上4(特定の共同住宅にあっては3)以上の建物(「特定建物」と言う)を建築するために譲渡されるもの |
市街化区域または既成市街地等に地域内に |
D |
所有期間が10年を超える土地・建物等 |
国内にある土地等・建物等 |
優良住宅地の造成等のために土地を売った場合の税率軽減の特例
優良宅地の造成等のために土地を売った場合の税率軽減の特例の基本事項
● |
下の表の譲渡資産を譲渡した場合に税率が軽減されます。 |
● |
平成20年12月31日までの間に所有期間が5年超の土地 |
● |
建物は対象外 |
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この特例が適用される譲渡 |
@ |
国または地方公共団体等に対する土地等の譲渡 |
A |
都市基盤整備公団等の行う住宅建設または住宅造成の用に供するための土地等の譲渡 |
B |
収用交換等による土地等の譲渡 |
C |
第一種市街地再開発事業の用に供するための土地等の譲渡 |
D |
特定の優良な建築物を建設する事業の用に供するための土地等の譲渡で次ぎの要件を満たすもの
a |
その建築物の建築が、市街化区域内及び非線引都市計画区域内で用途地域が定められている区域内において行われるものであること
|
b |
建築工事の施行地区面積が500u以上であること |
c |
建築される建築物の面積が150u以上あること(建築物の用途は問われません) |
d |
上記@〜Bに加え、さらに次のうちいずれかひとつの要件を満たすこと
1 |
(1−建ペイ率)+1/10以上の空地が確保されていること
(つまり通常より10%増しの空地の確保が必要だと言うことです)
|
2 |
2以上の土地所有地等の敷地統合であること
|
3 |
都市計画施設用地等の(都市計画決定された公園・道路など)が確保されていること |
|
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E |
特定の民間再開発事業(地上階数4以上の中高層耐火建築物の建築をすることを目的とする事業で、その事業が既成市街地等・高度利用地区・再開発地区計画などの地区内で施行されることおよび施行区域の面積が、所定の規模以上であること等一定の要件を満たすもの)の用に供するための土地等の譲渡
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F |
都市計画地域内における一団の宅地造成事業の用に供するための土地等の譲渡で、次の要件を満たすもの(業務用地を含む複合的宅地造成事業)
a |
開発許可または土地区画整理事業の許可を受けた事業であること
|
b |
施行区域面積が
1 |
市街化区域内の場合 1000u以上 |
2 |
非線引都市計画区域内の場合 3000u以上 |
3 |
市街化調整区域内の場合 5ヘクタール以上であること
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|
c |
都市計画施設または公共施設用地の比率が30%以上であること |
|
G |
大都市地域における優良宅地開発の促進に関する緊急措置法の宅地開発事業計画の優良認定および都市計画法の開発許可を受けて行われる複合的宅地開発事業の用に供するための土地等の譲渡 |
H |
都市計画法の開発許可を受けて行う一団の住宅地造成事業の用に供するための土地等の譲渡 |
I |
都市計画法の開発許可を要しない一団の住宅地造成事業の用に供するための土地等の譲渡で次の要件を満たすもの
a |
その事業が都市計画区域内において行われるものであること。 |
b |
その一団の宅地の面積が1000u以上(三大都市圏の特定市町村の区域にあつては、500u以上)であること |
c |
その一団の宅地の造成が、優良な宅地の供給に寄与するものであることについて都道府県知事の認定(優良宅地認定)を受けており、その認定の内容に従って行われること |
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J |
都市計画区域内において行う一団の住宅または中高層耐火共同住宅の建設の用に供するための土地等の譲渡で、次の要件を満たすもの
a |
その事業が都市計画区域内において行われるものであること
|
b |
一団の住宅の建設については、その住宅戸数が25戸以上であること
|
c |
中高層耐火共同住宅の建設については、住居の用に供される独立部分が15戸以上または住居部分の総延床面積が1000u以上であり、且つ住居の用に供される独立部分の床面積が50u以上200u以下であること等の要件を満たしていること
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d |
その一団の住宅または中高層耐火共同住宅の建設が優良な住宅の供給に寄与するものであることにつき都道府県知事または市町村長の認定を受けたものであること
|
|
K |
土地区画整理事業の施行区域内の土地を仮換地指定後3年以内に住宅地として譲渡する場合で、一定の要件を満たす土地等の譲渡
|
課税長期譲渡所得金額に対して、次の軽減税率が適用されます。
適用区分 |
税率 |
課税長期譲渡所得金額4000万円までの部分 |
20%(所得税20%:住民税5%)
|
課税長期譲渡所得金額4000万円超の部分 |
26%(所得税20%:住民税6%) |
中高層耐火建築物等(共同住宅)の建設のための買い換えの特例
中高層耐火建築物等(共同住宅)の建設のための買い換えの特例の基本事項
● |
下の表の譲渡資産を譲渡し,買い換え資産を取得した場合に課税の繰り延べができます。 |
● |
買換資産の取得の日から1年以内に居住の用に供する必要があります。 |
● |
買い換え資産は譲渡した年中又はその翌年中に取得する必要があります。 |
適用要件
譲渡資産 |
買換資産 |
次に掲げる区域内にある土地等又は建物等で、その土地等又は建物等の敷地の用に供されている土地等の上に地上階数3以上の中高層の耐火共同住宅の建築をする事業の用に供するために譲渡されるもの。
@ |
三大都市圏の既成市街地等 |
A |
三大都市圏の近郊整備地帯等(次に掲げる区域をいいます。)のうち、既成市街地等に準ずる区域として国土交通大臣が財務大臣と協議して指定した区域
a |
首都圏整備法第二条第四項に規定する近郊整備地帯等 |
b |
近畿圏整備法第二条第四項に規定する近郊整備地帯 |
c |
中部圏整備法第二条第三項に規定する都市整備地帯 |
|
B |
中心市街地の活性化に関する法律に規定する認定基本計画に基づいて行われる中心市街地共同住宅供給事業の区域(平成18年度改正) |
|
その中高層耐火共同住宅の建設事業の施行によりその土地等の上に建設された耐火共同住宅(その敷地に供されている土地等を含む)又はその耐火共同住宅に係る構築物
耐火共同住宅の要件 |
@ |
譲渡資産を取得した者又は譲渡した者が建設したものであること |
A |
耐火建設物又は準耐火建設物であること |
B |
床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供されるもの |
|
中高層耐火建築物等(特定民間再開発事業)の建設のための買い換えの特例
中高層耐火建築物等(特定民間再開発事業)の建設のための買い換えの特例の基本事項
● |
下の表の譲渡資産を譲渡し,買い換え資産を取得した場合に課税の繰り延べができます。 |
● |
買換資産の取得の日から1年以内に事業の用に供する必要があります。 |
● |
買い換え資産は譲渡した年中又はその翌年中に取得する必要があります。 |
適用要件
譲渡資産 |
買換資産 |
次に掲げる区域又は地区内にある土地等又は建物等で、その土地等又は建物等の敷地の用に供されている土地等の上に地上階数4以上の中高層の耐火建築物の建築をする特定民間再開発事業の用に供するために譲渡されるもの。
@ |
三大都市圏の既成市街地等 |
A |
都市計画法第4条第1項に規定する都市計画に都市再開発法第2条の3第1項第2号に掲げる地区として定められた地区 |
B |
都市計画に高度利用地区として定められた地区 |
|
都市計画に再開発地区計画の区域として定められた区域等(平成15年度改正) 都市再生緊急整備地域 |
|
その特定民間再開発事業の施行によりその土地等の上に建設された中高層耐火建築物(同一施行地区内の他の民間再開発事業等の施行により建築された一定の中高層の耐火建築物を含む)、これらの建築物の敷地の用に供されている土地等又はこれらの建築物に係る構築物 |
所得税:課税される所得金額に対する税額について
所得税は、「課税対象所得金額」=「収入(=「支払金額)」-「給与所得控除」-「所得控除の額の合計」をもとに算出されます。
課税対象所得金額の金額 |
課税される所得金額に対する税額 |
計算例(斜体数字は所得金額) |
0円 |
|
0 |
1,000円
〜 1,949,000円 |
課税対象所得金額×0.05 |
100万円×0.05=60,000円 |
1,950,000円
〜 3,299,000円 |
課税対象所得金額×0.1−97,500円 |
200万円×0.1-97,500円=102,500円 |
3,300,000円
〜 6,949,000円 |
課税対象所得金額×0.2 −427,500円 |
500万円×0.2-427,500円=572,500円 |
6,950,000円
〜 8,999,000円 |
課税対象所得金額×0.23 −636,000円 |
700万円×0.23-636,000円=974,000円 |
9,000,000円
〜 17,999,000円 |
課税対象所得金額×0.33 −1,536,000円 |
1,000万円×0.33-1,536,000円=1,764,000円 |
18,000,000 円〜 |
課税対象所得金額×0.4−2,796,000円 |
1,500万円×0.4-2,796,000円=3,204,000円 |