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瑕疵担保責任

瑕疵担保責任は、一般法として民法で規定されていますが、特別法として「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下、品確法)に住宅に関する規定があり、宅地建物取引業法では民法の規定の内容を変更する規定があります。

適用法律 瑕疵担保責任の内容
民法 売買契約における瑕疵担保責任
建築請負契約における瑕疵担保責任
品確法 売り主の瑕疵担保責任
請負人の瑕疵担保責任
宅地建物取引業法 売り主の瑕疵担保責任

民法

売買契約における瑕疵担保責任

瑕疵担保責任とは、特定物の売買契約において、その特定物に「隠れたる瑕疵(かし)」があったとき、売り主は買い主に対して損害賠償等の責任を負うことをいう。(民法第570条)。

特定物」とは、「この土地」というように取引当事者がその物の個性に着目して取引するような物のことであり、具体的には、不動産(土地・新築建物・中古建物)、美術品、中古車などのように世の中に一つしかないものをいう。
これに対して、ミカンのように種類と数量だけを指定したものは不特定物という。

また「隠れたる瑕疵」とは、買い主が一般的に必要とされる注意をしても発見できないような、物の品質・性能に関する「欠陥」のことである。
例えば、中古住宅の売買で、表面に現れていないシロアリや雨漏りであり、その原因が売買契約当時に存在していたならば、売り主は買い主に対して「瑕疵担保責任」を負うこととなる。

このような売り主が負うべき「瑕疵担保責任」の具体的な内容は次のとおりである。
a)買い主は売り主に損害賠償を請求することができる(民法第570条)。
b)瑕疵の程度が、売買契約の目的を達成できないほどに重大であるときは、買い主は売買契約を解除できる(民法第570条)。
c)瑕疵担保責任を追及できる期間は、民法では特に定めがない。従って売買契約書で「中古住宅の瑕疵担保責任は、買主に引き渡した日から1年間」と定めることも民法上は可能である。なお、この期間については、品確法、宅建法で特別な規定を設けている。
d)損害賠償請求や契約解除ができる期間は「買い主が瑕疵の存在を知った時から1年以内」と規定されている。

建築請負契約における瑕疵担保責任

民法では、建築物などの建築請負契約についても請負人の「瑕疵担保責任」を定めて、注文者を保護している(民法第634条〜第640条)。

請負人の「瑕疵担保責任」の具体的内容は次のとおりである。
a)建築請負工事の注文者は、請負人に対して建築物の欠陥についての損害賠償を請求することができる(民法第634条第2項)。
b)建築請負工事の注文者は、請負人に対して建築物の欠陥を補修する工事を行なうよう請求することができる(民法第634条第1項)。
c)瑕疵担保責任を追及できる期間は、民法第638条により「コンクリート造などの建築物では引き渡しから10年、木造などの建築物では引き渡しから5年」と定められているが、この10年・5年の瑕疵担保責任期間は契約により短縮できる。
実際の建築請負契約書では「引き渡しから2年」とされることが多い。
d)損害賠償請求や補修工事の請求ができる期間は「注文者が瑕疵の存在を知った時から1年以内」に制限されている(民法第638条第1項)。

品確法

売り主の瑕疵担保責任

売買契約や請負契約では、契約の対象となった物に瑕疵(かし)があることが後日判明した場合には、売り主や請負人は瑕疵担保責任を負わなければならない場合がある。

瑕疵担保責任は、売買契約については民法第570条で規定されている。しかしながら民法第570条は任意規定であるので、住宅の売買契約の実務では、売り主が瑕疵担保責任を負う期間を2年などの短い期間に設定するのが通例となっている。このように売り主の瑕疵担保責任が事実上非常に限定されていることが、欠陥住宅問題の発生原因のひとつであると考えられている。

こうした状況を改善するため、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第88条では「新築住宅の売買契約においては、売主は、住宅の引き渡しの時から10年間にわたって、構造耐力上主要な部分等に関する瑕疵担保責任を必ず負う」と規定した。
これは住宅の主要部分について売り主が引き渡し時から10年間にわたり瑕疵担保責任を負うことを義務付けることで、住宅の買い主を強く保護する規定である。

このような「品確法における売り主の瑕疵担保責任」の具体的な内容は次のとおりである。

1)適用対象は新築住宅のみである。
品確法では、売り主が10年間にわたり瑕疵担保責任を負うことを義務付けているが、この対象となるのは「新築住宅」のみであり、「既存住宅」は対象外である。
従って、既存住宅に関しては民法第570条により売り主の責任を追及するほかない。
ただし既存住宅の売主が宅地建物取引業者の場合は、宅地建物取引業法にもとづき、その売り主の瑕疵担保責任の期間が設定されている。

2)適用対象は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」のみである。
「構造耐力上主要な部分」や「雨水の浸入を防止する部分」に該当しない部分(例えば住宅の内装など)について欠陥が判明したとしても、品確法第88条は適用されない。この場合は民法第570条により売り主の責任を追及する。

3)瑕疵は「隠れたる瑕疵」であることが必要とされる。
売買契約における売り主の瑕疵担保責任は、契約の対象となる物に「隠れたる瑕疵」が存在する場合にのみ発生する。

4)引き渡しから10年が過ぎると、瑕疵担保責任を追及できなくなる。
売り主に対して瑕疵担保責任を追及することができる期間は、引き渡し時(建築業者から売り主への引き渡しがある場合はその時点)から10年間に限定されている。

5)権利行使期間が終了すると、瑕疵担保責任を追及できなくなる。
瑕疵担保責任を追及するためには、買い主が欠陥を発見したときから1年以内に、売り主に対して瑕疵担保責任を追及する必要がある。この1年の期間を「権利行使期間」という(品確法第88条、民法第570条・566条)。
この権利行使期間経過後、売り主に対して欠陥の補修または損害の賠償などを初めて要求したとしても、売り主は瑕疵担保責任を負わなくてもよい。

6)瑕疵担保責任の取り方は。
瑕疵担保責任を追及する方法としては、次の方法がある。
1.瑕疵修補請求
    買い主は売り主に対して、住宅の欠陥の補修工事を要求できる。
2.損害賠償請求
    住宅の欠陥の補修工事が可能な場合であっても、補修工事を要求することなく、その欠陥から生じた損害を金銭で賠償するように要求できる。    買い主は自らの判断で、補修工事と金銭賠償のどちらでも要求することができる。また補修工事と金銭賠償を組み合わせて要求することもできる。
3.契約の解除
    欠陥の程度がひどく、契約の目的を達することができない場合(居住困難な場合など)には、売買契約そのものを解除して、代金全額の返還と損害賠償を要求することができる。

請負人の瑕疵担保責任

売買契約や請負契約では、契約の対象となった物に瑕疵(かし)があることが後日判明した場合には、売り主や請負人は瑕疵担保責任を負わなければならない場合がある。

瑕疵担保責任は、請負契約については民法第638条等で規定されている。しかしながら民法第638条等は任意規定であるので、住宅の建築請負契約の実務では、請負人が瑕疵担保責任を負う期間を2年などの短い期間に設定するのが通例となっている。このように請負人の瑕疵担保責任が事実上非常に限定されていることが、欠陥住宅問題の発生原因のひとつであると考えられている。

こうした状況を改善するため、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第87条では「住宅を新築する建設工事の請負契約においては、請負人は、注文者に住宅を引き渡した時から10年間にわたって、構造耐力上主要な部分等に関する瑕疵担保責任を必ず負う」と規定した。
これは住宅の主要部分について請負人が10年間にわたり瑕疵担保責任を負うことを義務付けることで、住宅の注文者を強く保護する規定である。

このような「品確法における請負人の瑕疵担保責任」の具体的な内容は次のとおりである。

1)適用対象は住宅を新築する工事のみである。
品確法では、請負人が10年間にわたり瑕疵担保責任を負うことを義務付けているが、この対象となるのは「住宅を新築する工事」のみである。
従って、住宅の増築工事やリフォーム工事については、たとえその工事により住宅に欠陥が発生したとしても、品確法第87条は適用されない。この場合は民法第638条等により請負人の責任を追及するほかない。

2)適用対象は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」のみである。
「構造耐力上主要な部分」や「雨水の浸入を防止する部分」に該当しない部分(例えば住宅の内装など)について欠陥が判明したとしても、品確法第87条は適用されない。この場合は民法第638条等により請負人の責任を追及する。

3)引き渡しから10年が過ぎると、瑕疵担保責任を追及できなくなる。
請負人に対して瑕疵担保責任を追及することができる期間は、引き渡しから10年間に限定されている。

4)権利行使期間が終了すると、瑕疵担保責任を追及できなくなる。
瑕疵担保責任を追及するためには、建築物が壊れたときから1年以内に、請負人に対して瑕疵担保責任を追及する必要がある(この1年の期間を「権利行使期間」という)。(住宅品質確保法第87条、民法第638条第2項)
例えば、木造住宅の引き渡しから4年経過した時点で、欠陥による雨漏りが発生した場合、雨漏りの発生から1年以内に、請負人に対して欠陥の補修(または損害の賠償)を要求しなければならない。雨漏りの発生から1年を超えたのちに請負人に対して欠陥の補修(または損害の賠償)を初めて要求したとしても、請負人は瑕疵担保責任を免れる。

5)瑕疵担保責任の取り方は。
瑕疵担保責任を追及する方法としては、次の方法がある。
1.瑕疵修補請求
    注文者は請負人に対して、住宅の欠陥の補修工事を要求できる。
2.損害賠償請求
    住宅の欠陥の補修工事が可能な場合であっても、補修工事を要求することなく、その欠陥から生じた損害を金銭で賠償するように要求できる。    注文者は自らの判断で、補修工事と金銭賠償のどちらでも要求することができる。また補修工事と金銭賠償を組み合わせて要求することもできる。

宅地建物取引業法

瑕疵担保責任の規定により、買い主は瑕疵の存在を知った時から1年以内に限り、売り主に対して損害賠償を請求し、または契約を解除することができる(民法第570条)。

しかし売り主の側からすると、この民法570条の規定に従うと、例えば買い主が5年後に瑕疵の存在を知った場合でも、売り主は瑕疵担保責任から逃れることができない。これに対して、宅地建物取引業法では、次のような買い主が瑕疵担保責任を追及できる期間を制限を設定した。

1)宅地建物取引業者が、自ら売り主として土地・建物を売却するとき、買い主が瑕疵担保責任を追及できる期間を「土地・建物の引渡しの日から2年間」とすることができる。

2)上記1)の場合を除き、宅地建物取引業者が、自ら売り主として土地・建物を売却するときには、瑕疵担保責任の内容について民法の規定よりも買い主に不利となるような特約をすることはできない。

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最新更新2008/10/30