自宅を売った場合の譲渡税(課税がある場合)
ご相談内容
30年前に親から相続を受け移転登記し、居住している一戸建て住宅(土地及び建物【木造、モルタル造】)を4500万円(土地4000万円、建物500万円)で売却し、新築予定のマンションを住宅ローン利用せず、3000万円で購入し、移り住むこととなりました。
この場合、売った自宅の収入は、所得税及び住民税にどのように影響するのでしょうか。
また、手続きはどうすればよろしいでしょうか。
なお、売却した年の収入等による所得金額は、600万円とします。
論点の整理
- 取得費がいくらになるか
- 課税譲渡所得はいくらになるか
- 課税はどうなるか
- 居住用不動産を売却した場合の税法上の手続きはどうするのか
論点に対する考え方
- 取得費がいくらになるか
譲渡所得を計算する場合、購入価格と譲渡価格が必要です。しかし、この例のように相続により取得した不動産であり、その価格が分からない場合、この不動産の取得費を確定する必要があります。
不動産の取得費が分からないときは、譲渡価格の5%とすることが決められています。
取得費=譲渡価格×5%=4500万円×5%=225万円
- 課税譲渡所得はいくらになるか
譲渡所得を計算する前に、まず、売却する不動産の所有期間を確認する必要があります。
これは期間が長期か短期かにより課税方法が異なるからです。
「所有期間の計算方法」により計算すると、長期になります。
課税譲渡所得金額は「譲渡所得の計算方法」により計算しますが、今回は特別控除前の金額を算出します。
- 譲渡収入金額
4500万円を全て受領したこととし、4500万円となります。
- 取得費
1より、225万円となります。
- 譲渡費用
不動産の仲介手数料としてつぎのようになります。他の費用は無しとします。
仲介手数料=(4500万円×0.3%+6万円)×1.05=1480500円
- 課税譲渡所得金額=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)
=4500万円−(225万円+1480500円)
=41,269,500円
- 課税はどうなるか
「所有期間10年以上、買い換える、譲渡益あり」 との条件より、不動産を売ったときのケース別税金の中の、「適用課税 I」により
つぎのように検討をします。
- 譲渡所得が3000万円を超えているかどうか
41,269,500円は3000万円超であり、つぎの検討をする。
- 3000万円の特別控除の場合の課税額を算出(適用条件を満たしているものとする)
3000万円の特別控除の方法により
譲渡価格=(控除前)譲渡価格−特別控除額=41,269,500円−30,000,000円=11,269,500円
税率は「居住用財産の譲渡に係る軽減税率の特例」が適用され
税額=11,269,500円×14%(所得税10%、住民税4%)=1,577,730円
- 特定の居住用財産の買換の特例の場合の課税額を算出
特定の居住用財産の買換の特例の方法により
譲渡価格=(売却代金−購入代金)−((取得費+譲渡費用)×(売却代金−購入代金)/売却代金)
=(4500万円−3000万円)−((225万円+1480500円)×(4500万円−3000万円)/4500万円)
=1500万円−1243500円=13,756,500円
税率は長期譲渡所得の税率が適用され、
税額=13,756,500円×20%(所得税15%、住民税5%)=2,751,300円
今回の買換の場合、3000万円の特別控除を選択し、税額は1,577,730円となる。
- 居住用不動産を売却した場合の税法上の手続きはどうするのか
確定申告により申告する必要があります。
不動産の譲渡所得は分離課税になっています。 「譲渡所得の内訳書」に記入し、領収書等必要書類を添付の上、税務署に3月15日までに提出すればすみます。
確定申告書に添付する書類
1 |
譲渡所得計算明細書 |
|
2 |
譲渡に係る売買契約書の写し |
3 |
譲渡した資産の登記事項証明書(又は登記簿謄本・抄本) |
|
4 |
住民票の写し(譲渡した日から2ヶ月を経過した日後に譲渡した資産の所在地の市区町村から交付を受けたもの)、戸籍の附票の写しその他これらに類する書類 |
5 |
買換資産を取得予定(譲渡年の翌年中に取得する見込み)の場合は、買換資産の明細書 |
|
6 |
買換資産の取得価格を明らかにする契約書、領収書の写し |
7 |
買換資産の登記事項証明書(又は登記簿謄本・抄本) |
|
8 |
住民票の写し(買換資産の所在地のもの) |
|
|
※確定申告時に既に買換資産を取得している場合、5は不要 |