令和3年05月08日
おひとり様への旅立ち(死別)
地獄の始まり
ICUに移行してから、肝臓機能回復の為、必死の治療が行われましたが、効なく日々悪化するだけでした。
そしてICUに移行してから、5日目に遂に長い旅に立ちました。
この間、11時間に及ぶ長い手術、二日後の一般病棟への移動、六日後のICUへの戻り、そこで5時間に及ぶ緊急手術、
そして続く人工心臓、透析機に繋がれた哀れな姿が他界するまで続きました。
入院する時は、自分の足で病室に入りましたが、後で考えるとこれが実際に本人との最後の別れになったのです。
そして、手術後、12日目には、モノ言わぬ姿になったのです。
誰がこんな状況を想像できたでしょうか。
手術後は、ガンを切除した身体で自分の足で病院の出口をでていき、その翌日から体力回復の日々を過ごすことを予定していました。
こんな状況で妻が戻ってくると、後あと、私の心に大きな傷を残すことになったのです。
こんな時、遺族として考えさせられるのが、自分の選択が正しかったのかとの自問です。
手術をしない場合、次のケースが考えられます。
1.手術をしないで、なんらの症状がでてきたら対応する。
2.手術以外の方法で、ガンを焼き殺すとか、固めるとかの方法をとる。
1の方法をとった場合、日々ガンが大きくなり、転移したりすることが気にかかり、毎日が絶望的な暮らしになるのではないでしょうか。
2の方法をとった場合、抗がん剤との戦い、取り残しのガンが予想される中、暗い日々が続くでしょう。二度と笑いのない。
妻の立場に立てば、彼女は完治を信じて入院しました。手術後も一般病棟に移った時も本人は完治を信じていたでしょう。
そして突然訪れた、血栓による肝不全、肝性脳症。
この状態になると、間違いなく本人の意識は無くなっています。深夜の電話で駆けつけた時に見た姿からこれは明らかです。
この時に妻は人間として死んだといえると思います。この後続く治療中の彼女は意識のない単なる生物に過ぎないのです。
この亡くなり方は、よく考えれば、「ピンピン、コロリ」ではないかと思うようになりました。
ICUに戻ってからの状況は地獄ですが、本人の意識がないという事は、完治し、元気で生活できる事を信じて入院し、そして意識を失う。
そのように思ったら私の彼女に対する想いは少し気軽になったような気がします。
でも、この亡くなり方が残った私の心に大きなストレスを掛けることになったのではないかと思いました。