平成27年10月30日
ハーボニ―
こんな言葉はご存じないと思います。
これは9月末、日本で承認されたC型肝炎の特効薬の錠剤です。
今までC型肝炎に効く唯一の薬としてインターフェロンという薬が使われてきました。
ところが、副作用が強烈であり、途中で中断せざるをえない場合がよくありました。
それでもただ一つの方法ゆえ改良が重ねられ、30年前治る確率が5%程度であったものが順次30%、50%、80%と向上してきました。
私の妻はこの治療に4回も挑戦しました。それも1回の治療期間が短いもので半年、長いもので1年半です。
その間、熱、だるさ、嘔吐、脱毛、痒み等に悩まされました。
それでも結局治ることができませんでした。
それが10月になって上記のハーボニ―を初めて服用することになりました。治験の結果では限りなく100%治ることとなっています。
その上、副作用は全くないようです。
3ヶ月間の服用で、治療終了後ウイルスが検出されなかったら完治とみなされます。
ところでこの薬は飲み薬ですが、その価格はいくらと思いますか?
なんと1錠8万円です。
開発されたアメリカでは11万円もします。
治療には12週間、即ち84錠が必要であり、その合計金額は672万円にもなります(高級車一台より高い)。
ところで日本の場合は保険制度が完備しているお蔭で本人負担は月1万円即ち計3万円ですみます。
これはかって日本の医療制度にミスがあり、感染が広がったため、普通の病気よりも更に本人負担が軽減されています。
「退職後11年2ヶ月が経過しました。」の中で「沈みゆく大国アメリカ 堤未果著 岩波新書」を紹介しましたが、
この本によると民主党のオバマ大統領が尽力し、アメリカに全国民対象の保険制度を確立しました(いわゆるオバマケア)。
しかし、日本と比べて保険会社に有利な制度のため、救済は十分ではありません。
ハーボニ―のような高額治療は多くの場合、保険適用外となり、中産階級の家族が貧困家族へと転落していく様子が縷々(るる)書いてあります。
仮に妻と私がアメリカにいたなら今頃貧困家族になって路上で生活しているかもしれません。
日本国民でありホントに幸運であることに感謝・感激の日々です。
最近コンプライアンス違反問題が多発しています。
一つはあのフォルクスワーゲン。
排気ガスを環境基準に適合させるために不正に機能するソフトを搭載して販売した問題です。
原因は生産台数及び環境基準のいずれにおいても
VWより先を走っているトヨタに追いつき追い越そうとする経営姿勢にあり、会社ぐるみといわれています。
会社のトップはオーナー経営者であり、その命令は絶対的服従とのことだそうです。
担当部署は技術的にはクリアできなくても、何とかしなくてはいけない。
そこで止む無く不正な方法で基準をクリアする方法をとったようです。
二つ目は、マンション傾斜の問題。
杭の長さが基準に満たないためマンションが傾斜した問題です。
当初は、担当責任者の個人的ミスで収めようとしていたようです。
しかし、話はどんどん広がり、旭化成建材株式会社の他の責任者が施工したマンションも疑われています。
それが旭化成に留まらず、他の施工会社、建築業界全体へと広がっています。
その疑惑の波紋は杭だけに留まらす他の部位、即ち、耐震スリット構造問題や断熱材の手抜き問題と発展しています。
耐震スリット構造とは地震が起きた場合に柱に生じた歪から壁材を保護するために必要なスリットです。
問題になっているのは、そのスリットがないため、柱の歪により壁に亀裂が生じてしまうことです。
問題が発生した原因は、それぞれ意図的な基準に満たない設計と建築現場での基準違反と多少異なりますが、
いずれにしても僅かなごまかし、手抜きに比べてその「つけ」がべらぼうに大きいです。
その「つけ」は損失金額が多大のみならず、解決するまでの月日はべらぼうであり、その上「信用」が失墜します。
「信用」の回復は更に多大な月日と努力が必要です。
技術に関する「ごまかし」はいずれは発覚します。
技術に対しては誠実に真面目に対応した企業が結果的にその業界で首位に近づくのではないでしょうか。