賃貸借契約書作成の基礎知識
基礎知識
賃貸借契約の基本
基本的な約束事は、つぎの3つである。
- 何を賃貸するか
- どのように使用収益させるか
- 賃料をいくらにするか
この中で、2の内容は賃貸借契約特有の項目です。
これは、契約の中で重要な事項であり、例えば工場として使用するか住居として使用するかによって、建物の損傷程度も変わってきます。また、使用収益させるという意味に「借り主に対し目的に適した状態を維持、提供する」という内容を含むため、もし、貸し主にそのような積極的意志がない場合は、その旨契約書に記載しておくべきでしょう。
借地借家法の規制対象となるのは、
- 建物の所有を目的とする土地の賃借権及び地上権
- 建物の賃貸借の権利
土地賃貸借契約の種類と注意点
土地賃貸借の種類は
土地の賃貸借を借り主、貸し主の当事者で自由に取り決められるか否かを基準に分類すると次のようになります。
- 1..露天使用型賃借権
- 駐車場、資材置き場など、借地上に建物を所有することを目的としない賃貸借
この場合は借地借家法の適用はありません。
- 2.一時使用の借地権
- 工事現場の事務所、本店舗建築中の仮店舗のような一時使用の建物を建てることが明らかな契約。
形式的には借地借家法の適用がありますが、存続期間、法的更新、増改築等に関する実質的条項の適用はありません。
- 3.事務用借地権
- 専ら事業用の建物を所有する目的で契約期間が10年以上50年(注:事業用借地権の設定期間の改正)未満であるもの。
この契約は公正証書によらなければならない。
- 4.定期借地権
- 契約の存続期間を50年以上と定める場合に、その期間通りで土地の返還を特約する場合の契約。
この特約は書面によらなければならない。
- 5.建物譲渡特約付き借地権
- 借地権設定後30年を経過した日に借地上の建物を取り壊すことなく譲渡することが特約された借地権。
借地人や建物の賃借人即ち借家人の立ち退きまで保証されない。
- 6.普通借地権
- 上記のどれにも該当しない従来からの半永久的借地権。
借地人が契約更新を望む限り、貸し主にそれを拒否できる正当な理由がない限り更新されます。
契約締結時の注意
- 1.事業用借地権契約で公正証書を作成しなかったら
- 私製の契約書の内容から事業用借地権を設定する事が明らかな場合は、事業用借地権の設定の賃貸借が未だ成立していないと解釈され、また公正証書を作成することが記載されていない場合は、普通借地権の設定と同じと扱われる可能性があります。
- 2.一時使用の一時とは
- 法改正前の建物所有を目的とした場合、最短期間が20年でしたから、一時とは20年未満と理解されたでしょうが、法改正により、事業用借地権(最短で10年)が設定された現在では、一時とは10年未満と読むべきでしょう。
- 3.一時使用を明確にする
- 例えば、工事人用宿舎として、工事現場近くに設営される建物は通常、その工事が終われば目的を終了し、建物は撤去されると解釈されますが、実は「その工事のための宿舎」ではなく、その建設業者に「雇用されている工事人の宿舎」である場合は、臨時的建物とはいえません。従ってトラブルを防止するために契約書には「○○工事に伴う工事人宿舎」と具体的に記載しておけば安全といえます。
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